著者は村井理子さん。翻訳者・エッセイストということで、裏書きを見ると、「メイドの手帖」とか「ローラブッシュ自伝」とか、数々の話題作を翻訳されていますから、売れっ子の翻訳者のようです。(知りませんでした)
さて、現在は51歳の村井さん。話は、3年半前、47歳の時に始まります。
村井さんは当時ずっと体に不調を覚えていたのですが、
疲れが出やすい。少し息が切れる。なんだか夜中に何度も起きる。不安で眠れない日が続く……思い当たるのは、これくらいの症状だった。
発病当時47歳だった私にとって、多少の体調不良はすべて、更年期障害とひと言で片づけられるものだった。
ファンデーションの色が合わないのも、肌がくすむのも、まぶたが厚くなったのも、すべて年齢のせいだと思っていた。
でも、急激な体調悪化で駆け込んだ病院でわかったのは、死ぬか生きるかレベルの心臓病だということでした。
そこからは闘病記になるのですが、どんな深刻な場面でも、大変な自分のありさまを飄々と眺めているような筆者の視点があって、笑える話にしていくところがすごい。
とはいえ、心臓の検査のようすなど、リアルで、こんな経験はしたくない!と心底思うほど痛く、恐ろしい感じでしたが……。
最終的には胸を開け、胸骨をのこぎりで切っての心臓手術を受けました。
幸い、術後の回復は順調で、現在はなんの不自由もなく、健康に暮らしているとのこと。
印象に残る話がたくさんあるエッセイですが、へぇ~と思ったのは、術後に思いがけず「家に帰りたくない」と思う話です。
筆者には当時は小学生だった双子の男の子がいます。その子たちのためにも、何としても生きのびなくてはと思っていたはずなのに、いざ退院となると、帰りたくなくなったのです。
頼りになる先生や、看護婦さんがいて、いつも清潔な病院。食事はおいしく、励まし合う仲間もいる。
家に帰ったら、まだまだ手のかかる子どもたち。やんちゃな犬。だんなさん。
なんだか面倒に思えたそうです^^
分かる気もする・・・・。
あと退院したあとは、とにかく「軽さ」にこだわるようになったとも述べていました。
衣類、靴、バッグ、日用品もろもろ。これもわかる気がする。
手術を経験して、著者はずいぶんわがままになたっと思う、と述べていました。
それまでは、我慢に我慢を重ねて育児に仕事に頑張ってきたが、一旦足を止めてみたら、自分がどれだけ無理をしていたかに気づいた、と。
まずは自分を優先させる練習を重ねた、と述べていました。(努力しないと主婦は自分が後まわしになりがちですからね)
大変な経験がいつのまにか笑える話になっている、そんな一冊でした。でも、そのところどころに、心にしみるようなエピソードやことばがあり、今年読んだ本で一番の本かもしれません。
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