垣谷美雨さんの本は、どんな重たいテーマの本でも、一気に読めて、最後はハッピーエンド(?)なので、読後に落ち込むことがありません。
でも、今回の本は、落ち込みはしないけれど、ズシンと考えさせられる内容の本でした。
帯にはベテラン主婦のハッピー離婚プランとあるが
主人公は58歳のパート主婦。
パートといっても、時間的にはフルタイムで(それをはたしてパートというのか?)、待遇だけがパートの主婦です。
大卒の夫は、高卒でパート勤務の妻を見下し、テレビのリモコン一つ動かさず、2階にいる妻を呼びつけたりする。
深夜、酔っ払って帰宅したときには、カギを出すのが面倒なので、ドアをたたき、2階で寝ている妻を呼ぶのです。
極端に偏食で口うるさいくせに、夕ご飯が要らなくても連絡ひとつせず。
と、挙げていたら、よその家庭、それも物語の世界の話なのに、ムカムカしてくるような夫なのでした。
一緒にいるだけで息がちゃんと吸えなくなる(本文より)夫だけど
文句を言えば、もっとイヤな思いをするし、別れたら食べていけるのだろうかと不安な主人公。
このあたりは日本の既婚女性だったら、たいてい「わかる・・・」と思うことでしょう。
そんな彼女が、感情にまかせて一気にではなく、ちゃんと策略を練り、準備もし、離婚へ向けて動き、まずまず納得できる離婚を勝ち取る。
そんな物語です。
同じ時代を生きた主人公
私のオットは、この物語の夫とはずいぶん違いますが、それでも「うちでもこんなことあったなあ」と思うところがいくつもありました。
私自身、子どもが小さい時分は、フルタイムで働いていたので、仕事に育児、家事で日々クタクタになっていましたが、オットは皿1枚洗うことはなく、何か言えば不機嫌になるので、要望を言うのやめることも多かったです。
あるとき、もう生活を回しきれなくなり、「掃除だけでも人に頼みたい」と言ったことがあったのですが、「他人に家に入ってほしくない」という不機嫌な返事が返ってきただけで、話し合いになりませんでした。
物語の中で、主人公が(彼女も若い頃は共働きでした)、子どもが小さいころ熱が出たときなどに交替で休んでもらえませんかと夫に言ったら、鼻で笑われた。
でもあのときに、その時だけでも人に頼んで、仕事を継続する、そんな考えが自分にはなかった、と反省をするくだりがあります。
いっしょだ、と思いました。
自分には確たる考えや覚悟があったか?
でも、ほとんど同じ時代を生きた、トマト仲間のTさんは、20代で結婚するときに、自分はずっと働きたい。だから家事は協力しながら生活するという人でないと、結婚はしたくないと、結婚相手に言ったとのこと。
それがイヤだと言うのだったら、結婚はしないと宣言したそうです。
考えも覚悟もあったわけです。
で、彼女の夫は、ヒフティーヒフティーとまではいかなかったかもしれませんが、今に至るまでずっと、家事をする暮らしを続けており、彼女は私の周りで、ただ一人の「夫のグチを言わない人」になっています。
時とともにオットも変わり
今では皿も洗えば、私の考えも冷静に聞いてくれるようにもなりました。
でも、私の中にはどこか「被害者意識」や「奴隷根性」(これは物語の中で出てきた言葉です)が残っていてます。
残りの人生、言いたいことは穏やかに言い、もちろん相手の言い分も聞き、「私ばっかり・・・」と思わないで暮らしていきたいです。
そのためには多少の覚悟と、しっかりとした算段が必要なんだな。
そんなことを思わされた本でした。
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